『たーまん世界を歩く』の連載が終わってから1年以上が過ぎ、世界見聞家・たーまんから後日談が届きました。
連載終了時に宣言していた「フィリピン移住編」のスタートです。
世界をともに旅した愛する妻のあこちゃんはもちろん、長男・唯燦也と次男・碧閃も加わった4人家族での新生活や、いかに!?
プロポーズ時の約束だった「次は家族で世界旅を」の、はじまりはじまり!
【出国!!未知の都市ドゥマゲッティ!!!!】
あれから4年
新型コロナウイルスが世界を飲み込んだ2020年、僕はスペインで出会ったあこちゃんと共に日本へ帰国した。
それからは結婚して、東京や横浜で仕事して、2人の子どもに恵まれ、傍目から見るとただ夫婦になった2人が、旅に出る前の生活に戻っただけに見えたかもしれない。
でも我々にはずっとあった!
「次は家族で世界旅をしよう!」
という、結婚した時の約束が!!
しかも今回はバックパックひとつじゃない。
1歳と2歳の息子を連れて、4人で始まる家族まるごと移住旅だ!
(そもそもあこちゃんはバックパックどころかデカいキャリーケースだったけど)
日本での生活は楽しくないのか?と言われると、そんなことはない。
様々な国に行ったけれど、僕はやっぱり日本が大好きだ!!
ただそれでも「もっと世界を知りたい」「もっと新しい体験がしたい」という想いは常に心の奥底から湧きあふれ、安全安心で勝手知ったる社会に守られた、この完璧で退屈な時間をぶっ飛ばしたいと思ってしまう。
だってどう足掻いても人生は一度きりで、この世界はまだ行ったこともない場所だらけだから!
あこちゃんと子供たち、家族みんなで過ごす時間がかけがえのないものであることは、世界のどこにいても変わらない! だからこそ我々は、世界旅への道中も最大限楽しむことにした!
「リモートワークで日本円を稼ぎつつ、物価の安い国に移住して旅の資金を貯めよう!」
こんな作戦を胸に、世界見聞家たーまんとあこちゃんの、世界旅2.0への火蓋が切って落とされた!!
目的地は“ドゥマゲッティ”
え、どこそれ?という声、聞こえてます。
世界旅2.0に向けて「物価が安く、外国人が住みやすい街」を探していた我々は「ドゥマゲッティ」という街に目をつけた。
ドゥマゲッティは、フィリピンにあるネグロス島(え、その島もどこそれ?っていう声まで聞こえてます)にある、大学が集まる学園都市。
山と海に挟まれた自然豊かというか自然そのまま?の田舎町で、なんとあのフォーブス誌が「老後に住みたい街ランキング世界5位」に選んだ場所だそうな。
全然老後どころか子育て真っ盛りの我々だけど、
・治安がいい
・大学病院があって医療が安心
・物価が安い
・日本からのアクセスが良い
ということで、ヨーロッパ案もあったけど移住先はドゥマゲッティに決定!
これまで名前も知らなかったのに、行くと決まったらめちゃくちゃ楽しみ!!
ていうか、島暮らしめっちゃ良いじゃん!!!
京都と山梨という、お互い山に囲まれた盆地で育った我々は出発の日を待ち望んで最後の東京の日々を過ごしたのだった。
出発前日:我が家とお別れ
そのためにもまず、3年と半年間お世話になった家とお別れだ。
この家では本当にいろいろなことがあった…
色々な仕事を経験して帰ってきたのも、赤ちゃん2人を大パニックで育てたのもこの家だ。
すっかり空っぽになった押入れで子ども達が遊ぶ中、大掃除に精を出していた僕とあこちゃんは、最後の現調に大家さんが来た時もう既にヘトヘトだった。
大家さん「寂しくなるねぇ、どこに引越すの?また都内?」
あこちゃん「いやフィリピンに。」
大家さん「え、フィリピン!?奥さんフィリピンの人だったの!?」
いや大家さん勘違いの角度すごいな!!
奥さんの実家に里帰り、とかじゃないから!!
池袋駅:さっそく事件発生
しっかり誤解を解きつつ大家さんにお礼を伝え、成田空港までのシャトルバスに乗るため池袋駅へと出発!!
その後は翌朝の便でいよいよフィリピンへと出発すべく、近くのホテルで一泊する予定だ。
この…大量の荷物と共に。
まさか待ち望んだ出発の日とは思えないほど僕の顔が既に死んでいるところ、注目して欲しい。
この時点で完全に、HPは0に最も近い1。
ウルトラマンでいえば既にタイマーが鳴り始めてる状態。
そしてなんと言っても片方のキャリーケースの車輪が全然動かない!!
その最大の長所なくなったらさ、君ただの重い箱なのよ!
それでも駅に妊娠中の友人がわざわざお見送りに来てくれてテンション上昇!
大変な時に来てくれて…泣ける…ありがとう!
駅ではたまたまイベントをやっていたので、屋台が立ち並んでいた。
会話する2人に気を利かして「飲み物買ってくるわ〜」と向かう僕。
今、出ちゃってるよね?気の利く良い夫オーラ。
いや意識してる訳じゃないんだよ?でもつい出ちゃうんだよねー!
しかしここで、違和感に気付く。
たーまん「あれ…財布ない。え、スマホも…?」
さーっと血の気が引く。
あこちゃん「はぁ!?何言ってんの!?」
広場で荷物を全開にしてひっくり返す我々。
気を利かせて飲み物を買ってきてくれる友人。
はい、良い夫アピール2秒で消し飛びました。
GPSという名の女神
あこちゃん「…荷物にないってことは、まさか家?」
たーまん「いや大家さんも一緒に確認したんだから家はないわ!」
あこちゃん「本当に?」
たーまん「家だけはない!!俺最終チェックしたしね。この近辺で落としたんよ」
あこちゃん「…”iPhoneを探す”で見てみるね」
ピッ…
表示されたiPhoneの現在地は…
あこちゃん「家じゃん!!」
たーまん「今すぐ行ってきます!!!」
猛ダッシュでレンタル自転車に飛び乗り、汗だくで離れた場所にある大家さんの家へ。
鍵を受け取りアパートに戻ると…
なんで綺麗に並べてんだよ!!
その暇あったら荷物に入れろよ過去の自分!!
ドゥマゲッティ到着に向け、自らハードルを上げて追い込んでいくスタイル。
シャトルバス:当然出発済み
たーまん「すみませんでした!」
あこちゃん「目の前でシャトルバス行ったからね。」
たーまん「言い訳すらありません。」
あこちゃん「東京駅から予約不要のシャトルバスが出ています。これから東京駅に行きます」
たーまん「ありがとうございます!!」
またも重い荷物を引きずり、電車で東京駅へ。
階段…改札…人混み……肩は砕け、子ども達は飽き、僕の魂は半分以上身体から抜けてた。
しかしそんな我々に救いのバスが!!
「予約不要 成田行き」その文字を見た時、僕は神の存在を信じたね。ほんとに。
なんと身重の身体で東京駅まで見送りに来てくれた友人に感謝を伝え、待ち時間にやっとお昼ご飯を食べ、我々はバスにすべり込んだ。
たーまん・あこちゃん「ふおぉぉぁぁぁ……」
生き返った…!
リクライニングに身を預け、朝の大掃除から張り詰めていた我々は久しぶりにリラックス。
よし、待ってろドゥマゲッティ!第一関門クリアだぜ!
(荷物ちゃんと入れてたら、そもそも関門はなかった。)
成田空港近くのホテル(天国)
成田空港を経由して、ホテルに到着。
もはや呪いの装備と化したキャリーケース(車輪死亡)の呪縛からとき放たれ、僕の右腕は歓喜の声を上げた!
でも、それ以上に嬉しそうだったのは子どもたち!
ロビーにあるクラシックカーやバイクの模型、デカいテーブル。
長男「テーブル!!おっきいね!!!」
次男「キャハハハハハハ!!!」
焦って追いかけ注意する僕に構わず走る!転がる!テンション爆上がり!!
制御できない。しかし、それでも良かった!
ようやく子ども達の時間を作ってあげられたのだ!
チェックインが済んでからもしばらく広いホテルを探検して楽しみ、最後にはお土産コーナーで日本の味を爆買い。
子供たちが寝静まってからの夜食カップラーメンも購入!
こういう時のカップラーメンって異常に美味しいよね。
現金の日本円はここで使い切ったから、区切りという意味でも象徴的な時間となった。
出発の朝。そして一風堂。
朝は早かったけど、心は軽い!
ホテルのシャトルバスでスムーズに空港へ。
あこちゃんが事前に調べてくれていたおかげだ。彼女はこういう下調べが本当にすごい。
これから行く人にも絶対覚えておいて欲しい。シャトルバス付きホテルが最強。
(そして”荷物のチェックは怠るな”)
沖縄旅行で国内線の飛行機には乗ったけれど、国際線の飛行機は4年前のペルー以来だ。
久しぶりに審査をして荷物を預け、出国ゲートをくぐる…
あんなに何回もやってきたことなのに、なんだか緊張するぞ。
それでも我々、ゲート内の一風堂の存在は見逃さなかった!!
そこの嗅覚、どうやらまだ生きてた!
短い時間で急ぎ一風堂をかき込み準備は万端。
前の晩にカップラーメンも食べてたことは忘れて欲しい。
恐怖のフライト開始
飛行機に乗る直前、僕の胸は高鳴っていた。
でもこれ、なんかただのワクワクとはちょっと違う。
そう「はたしてこのキッズ達、5時間15分を無事に過ごせるのか…!?」という不安だ。
これぞまさしく関門。ドゥマゲッティへの道のりは長いぜ。
沖縄旅行での経験をもとに、チーム編成は決まった。
・長男(映画があれば乗り切れる可能性大)&僕
・次男(本能で生きてる)&あこちゃん
この席順である。
結果ーーーー
長男はディズニーとラプンツェルのおかげでなんとか安定。
次男は…地獄へでも連れてかれるのかってくらい、泣き叫び続けた。
あこちゃんの魂は完全に抜けていたし、僕が加わると更にヒートアップ!
疲れて眠ってくれるまでヘトヘトになりながら対応した。
周囲の人たちにも気を遣って謝りつつ…やっと寝てくれてひと安心。
しかし2日間もこんな移動をさせて、子ども達もストレスを感じていることだろう。
現地に着いてリラックスしたら、どこか広い場所で遊ばせてあげたい!
そんな意味でも、ドゥマゲッティ到着への期待は高まった。
マニラ空港:誤算の連続
ようやくフィリピンの首都「マニラ」に到着!
ここで乗り換え待ちをし、いよいよ「ドゥマゲッティ」行きの飛行機へと乗り込むのだ!
しかしここからがまさかの「第二章:誤算地獄」のはじまりだった…
まず、謎のeTravelシステムとかいうやつに登録してなかった。
フィリピン入国の際に必要なオンライン登録で、ガイドブックの1ページ目に載ってる話なのだけど…これで当然のように足止め。
空港の職員さんに助けられながらなんとか全員分登録したら、次はターミナル移動。
日本の感覚で隣の建物かと思いきや、車orバスで行かなきゃいけないくらい遠い!!!
職員さん「タクシー使った方が良いぞ。でも流しのタクシーはやめとけ。」
ってアドバイス貰ったけど微妙に難易度高いな!!
そもそもどうやって見分けんだ!
たーまん(いや待てよ…)
そこで僕は急いでSIMを購入!
なぜなら、東南アジアのUberである「Grab」がスマホに入ってるじゃないか!
タイで高熱を出した時に助けられて以来、なんとなく消せなかったアプリがここで活きるとは!
(たーまんvol.39参照:http://www.artistbank-jp.com/tarman/vol39.html)
タクシーの待ち時間でフィリピンペソも調達完了!
そしてここまでの一連の流れで驚き&癒しだったのは、
フィリピンの人たちが子連れグループに対してめっっちゃくちゃ優しいこと!
子どもの相手をしてくれたり、優先レーンを案内してくれたり…
東京にいる時、公共機関ではうっとうしがられる程だったが、フィリピンの人たち、配慮がずっと温かい!!
これは到着してからの生活も安心できるぞ!!
混乱の中、かすかな希望の光が見えた!!
最終ターミナル:カオスと炎上未遂
「Grab」で呼んだタクシーに乗り込み、無事に目的のターミナルに到着。
我々の便のゲート前まで来たものの、座れる席もなく、これから長い待ち時間…
クッタクタの僕とあこちゃんの間には、もはや必要最低限の会話しかない。
いやもう、魂削り過ぎてる。
え、ていうかほんとにこれ待ち望んだ出発の日?
ついに床に座り、あこちゃんに関してはほぼ寝転んでる。
まぁ、周りもそんな感じだし良いか…
子ども達よ、申し訳ない!とか思ってたけど彼らめっちゃ元気。逆に怖いわ!
安心させてくれてありがとう。
ゲート前で数時間の待機。
やっと搭乗開始まで残り10分ほどに迫ってきたころ…
あこちゃん「え、今アナウンスで私たちの便呼ばれなかった?」
たーまん「ん?でも液晶に何も出てないぞ?」
しっかり聞いてみると…
たーまん・あこちゃん「出発ゲート変更のお知らせ!?」
液晶には何も出てないのに!? しかもめっちゃ適当に早口で!?
たーまん「急ごう!!ていうかあこちゃんよく聞き取れたな!!」
液晶:無告知 + アナウンス:英語(適当)= 全力疾走
という方程式が成り立ったところで、子ども達を呪いのキャリーケースに乗せつつ全力移動!!
新ゲートに到着!!
たーまん「危うく乗り過ごすところやった…助かったーー、あこちゃんありがとう!」
からの、1時間待たされる。
え、なんだったの?今の焦らせ、なんだったの?
しかも、なぜかドゥマゲッティ便の搭乗ゲートだけ隔離されてて暑い。
エアコン効いてない。暑い。(2回目)
隔離されてるこのエリアには明らかに地元民しかいない。
ここにだけ空港特有のキラキラ感が全然ないけど…そこは気付かないフリしておこう。
最後のフライト、そして到着
マニラ→ドゥマゲッティのフライト時間は1時間半ほど。
しかし我々の体感としては、友達みんなでゲームしてる時に人のプレイ見て自分が何もしてない時くらい長い。
長男は寝てしまった。可愛い。
着いてくれ…早く着いてくれ…
そんな我々の想いが頂点に達した時!
ついに窓の下に鬱蒼としたジャングルが見えた!!
…え、今からこの島に降りるの?ていうか住むの?大丈夫?
到着:ドゥマゲッティ
夕暮れの中滑走路に飛行機が降り立つ。
そしてそのまま
アナウンス「着陸しました。ドアからお降りください。」
あ、滑走路にそのまま降りる感じ?
オーケーです、もはや驚きませんよ。
ちょっと歩いたところに見えるのは、必要最低限の空港。
たーまん(なんか、グヌン・ムルの空港を思い出すな…)
(たーまんvol.25参照:http://www.artistbank-jp.com/tarman/vol25.html)
まだ世界旅は始まってない。
でも、こうして海外で生活ができる状態を作るまでの道のりも長かった。
たーまん「やっと着いたね…」
発した言葉には、ただの到着以上の気持ちが込もってた気がする。
あこちゃん「着いたね、やっと!」
いやいやあこちゃん、泣いてる。
まだ何も決まっていないし、家の契約もまだ。
不安なことだらけなはずだけど…
この時心には、知らない場所にも関わらず「やっと帰ってきた!」という気持ちに似た、喜びと安堵が湧き上がっていた。
この不思議な気持ちはなんだろう。
それは新生活へのワクワクかもしれないし、数年ぶりに異国の地での生活が戻ってきたことへの喜びかもしれなかった。
4年間いろいろなことがあったが、ちゃんとここに辿り着いたんだ!!
たーまん「また始まるね」
僕も泣いてた。
あこちゃん「私たちのフィリピン編、スタートだね!」
たーまん「おう!!」
つづく。