たーまん世界を歩く

ただただ忙しく過ぎていく社会人生活に、漠然とした焦燥感を覚え、昨年秋に一念発起して退職しました。
そして半年間、寝る間を惜しんでリゾートホテルの住み込みバイトで貯金し、2019年6月1日、関空から出発。
目的は、これまでの人生で知らなかったことを見聞きすること。世界見聞家・たーまんの誕生です!
カタコトの英語と予算約100万円での旅はYouTubeでも配信中ですが、映像に入れられなかったことを
こちらのブログで紹介していきます。たーまんの珍道中、応援よろしくお願いします!

Vol.83

モロッコ マラケシュ編

【絶望!!人の心が死んでしまう時!!!!】

現在あこちゃん・なっちゃんと共にサハラ砂漠からの帰り道だ。

たーまん「フェズ旧市街戻ったらまたあの中華食べたいなー」
あこちゃん「もうフェズは戻らないよ?」
たーまん「え、そうなの!?」

旅の計画を丸ごと2人に任せている僕は全く知らなかったのだが、これから向かうのはマラケシュというモロッコの中級都市。
フェズ→サハラ→フェズではなく、フェズ→サハラ→マラケシュというルートだった訳だ。

マラケシュにはマラケシュ・メナラ空港という国際空港があり、多くの空路のハブになっている。
僕たちはこれからマラケシュに向かった後、飛行機でエチオピアを目指すとのこと。
全く知らずに行動していたとは恐ろしい…

ちなみにこのマラケシュの旧市街も世界遺産に認定されているそうで、ただ空港に行く為に寄るだけではなくしっかり観光もできそうだ。

ーー数時間後ーー

到着したマラケシュの街並みは思った以上に発展していた!!
旧市街は沢山の屋台が軒を連ねており、その周辺には観光地らしく整備されたお店が並んでいる!

ヨーロッパからすぐに来れるアクセスの良さで、空港まである世界遺産の街なのだから、人気なことにも頷ける。
屋台のような地元の人も使う昔ながらのお店が観光地化し、周辺のお店が近代化しているあたりはタイの観光地と構造がそっくり!
都市の進化には、ある程度パターンのようなものがあるのだろう。

僕らは数日滞在して観光を楽しんだのだが、あまりに観光地化している街並みに僕らの居場所はないようで、すぐに街を離れることになった。

これから向かう先はエチオピアだ。
アフリカ旅2番目の国!!
僕たちは意気揚々と空港に向かった。のだが…

この空港でとある事件が起こることとなる…

それは出国ゲートを通る前のことだった。
セキュリティが厳しめのモロッコの空港は出国ゲートの前にも簡単な荷物検査がある。

そこでなっちゃんが声をかけられたのだ。

職員「あなた、列から外れて」
なっちゃん「えっ、私?」

なっちゃんの荷物は量が多くジッパーが閉まりきっていなかったので、それについて言われているのかと、僕とあこちゃんは遠巻きに見ていたのだが…

あこちゃん「なんか言い合いになってるね…」
たーまん「うん…」

そしてついに…

たーまん「カバンめっちゃ開けさせられてる!!」
あこちゃん「やばいよ行こう!!」

なっちゃんの荷物は完全に開けられ、中から何かを取り出されている!!

あこちゃん「なつどうしたの!!」
なっちゃん「いやなんかドローンを出せって言われてる」
たーまん「どういうこと!?」

この時初めて知ったのだが、実はモロッコはドローンの国内持ち込みが禁止されている国なのだ!!
なっちゃんはスペインから船で渡って入国した為チェックが甘かったようだが、実際は国内にあること自体がマズいもの。
そんなもん空港に持ってきたらそりゃ引っかかるわ!!

ていうか……

たーまん「なっちゃんそれめっちゃ高い良いやつなんじゃないの!?」
なっちゃん「いやそうだよ!!没収されたりしたら最悪だよ!!」

なっちゃんはついに言われた通りドローンを取り出した。
ドローンについて詳しいわけじゃないが、結構大きめのいかにも良いやつである。

職員「よし、そしたらこっちに来るんだ」
なっちゃん「待って、ちゃんと見せたら返してくれる?」

職員「それは分からん。お前はテロリストかもしれない」
なっちゃん「テロリストだったら今素直にカバン開けてないわ!!」

職員「とにかく来るんだ!」

気付けば1人増えていた職員さんに腕を掴まれ、なっちゃんが連行されていくーー

あこちゃん「なつ!!ラウンジで待ってるからね!!」
たーまん「なっちゃんwwww」

僕はというと笑いが堪えきれなかったが、フライトまでにはまだまだ時間がある。
どうなることか分からないが、とにかくラウンジでなっちゃんを待つことに。

あこちゃん「まさかこんなことなるなんてねw」
たーまん「いやいやなっちゃん持ってるわ〜w」

なんて言って笑っていたのだが、いくら待ってもなっちゃんはラウンジに来ない。
だんだん心配になる我々。

あこちゃん「え、捕まったとかないよね?」
たーまん「いやさすがに持ち込んだだけじゃ捕まらんと思うけど…」

そこから更に待つこと2時間………

ついになっちゃんが現れた!

たーまん「おーーーー!なっちゃん!心配した…よ…」

なっちゃんは眉一つ動かさずそこに立ち尽くしていた…

たーまん「……………」

生気を失った目には全く光がなく…
何かを見つめてるようでいて…
どこも見ていないような…

たーまん「ちょっと…なっちゃん…それ…顔…」

必死で笑いをこらえる。笑ってはいけない。
さっきまで「帰ってきてもし没収されてたら笑い飛ばしてあげよう!」なんて言っていたことが嘘のように笑ってはいけないムード。

あこちゃん「なつ…あの…」

つい先日サハラ砂漠で大きいドローンを頑張って運び「初フライトだ!飛んでけー!」とはしゃいでいたなっちゃんの姿が、今もありありと目に浮かぶ。

たーまん「なっちゃん、あの…」

なっちゃん「……ル…」

たーまん「えっ?」

なっちゃん「…ビール くれ 」

たーまん「取ってくるわ!!!!!!」

僕はここ数年間で間違いなく1番の俊敏さでビールの確保に向かった!!

そしてなっちゃんは黙ったまま2本のビールを飲み干した。

なっちゃん「……ほんとにさ…今までめっちゃ重かったんだよ、あれ」

もうこの言葉だけで僕は爆笑してしまった。

何しろなっちゃんはスペインにてサンティアゴ・デ・コンポステーラという、スペイン版お遍路みたいな過酷な巡礼路を踏破したのだ。
その時も重くてデカいドローンをリュックに詰めていたはず。

あこちゃん「え、ほんとに没収なの?返してくれないの?」
なっちゃん「なんか検査するから、それ終わったら返してくれるらしい」
たーまん「良かった良かった!俺ら次の便でも良いよ!待とうよ!」

なっちゃん「検査1ヶ月かかるらしい。」

1ヶ月!!!?
いやいやいや1ヶ月って何を見るんだ!!!?
やめてあげてよ!!
サクッとチェックしてあげてよ!!!

なっちゃん「それでさ、モロッコまで取りに来たら返すだって。」

無慈悲。
無慈悲すぎる。

こうしてなっちゃんのドローンだけ、モロッコの地に居座ることになった。

しかしフライト時間は迫る。
ラウンジを出ようとした時、またなっちゃんが止められた。

スタッフさん「君、ビールは3本目以降有料だからお金払って。」

つづく