たーまん世界を歩く

ただただ忙しく過ぎていく社会人生活に、漠然とした焦燥感を覚え、昨年秋に一念発起して退職しました。
そして半年間、寝る間を惜しんでリゾートホテルの住み込みバイトで貯金し、2019年6月1日、関空から出発。
目的は、これまでの人生で知らなかったことを見聞きすること。世界見聞家・たーまんの誕生です!
カタコトの英語と予算約100万円での旅はYouTubeでも配信中ですが、映像に入れられなかったことを
こちらのブログで紹介していきます。たーまんの珍道中、応援よろしくお願いします!

Vol.124

ペルー ジャングル シャーマン編

【深淵!!ジャングルが生み出した文化!!!!】

スペインで出会ったあこちゃんと共にペルーへと入国。
アンデス山脈を越え、ついに南米ジャングルへと到達した!

ペルーやブラジルなど南米北部の多くの面積を占めているこの巨大なジャングルは、なんと大気中の酸素の20%を生み出していることから「地球の肺」などと呼ばれている。

更に豊かな自然が生み出す生物の多様性はとてつもなく、分かっているだけでも昆虫が250万種、魚類3000種、植物4万種、哺乳類427種、鳥類1294種、更に両生類や爬虫類…
毎年発見される300種以上の新種…などなど

「もしかして地球上の生き物みんなここにいる?」
という感じになっちゃってる。

薬用効果をもったいわゆる薬用植物もたくさん存在しており、現代の医療で使用される薬の4分の1は、こういった熱帯雨林の薬用植物に由来しているのだそうだ。

これも「薬草ってほんとにあるんだ…」という感じである。
てっきりゲームの中だけの話かと思ってた。

知らずのうちに恩恵を受けていたらしいジャングル。

そんなジャングルには沢山の部族が今も暮らしていて、中には外界と接触を断ち、原始的な生活を送り続ける部族もいるという。

我々が辿り着いたのはシピボ族が暮らすエリアで、ジャングルの外と距離が近いシピボ族は、混血も多く比較的近代的な部族だ。

部族のシャーマン

部族の各集落には、リーダー的ポジションを務める「シャーマン」が存在している。

「シャーマン」というので霊媒師か?イタコか?
なんて考えていたのだけど、話を聞いていると、どうやら「シャーマン」と呼ばれる人たちは「ドクター」に近い存在らしい。

彼らは前述のような薬用植物に詳しく、それを扱うために食事制限などの厳しい修行をしている。
具体的には一定期間、1種類の薬草のみを食べ続けて身体に表れる効果を自分で知る、という修行法である。

いや体当たりすぎる!!!
自ら実験体になるスタイル!!!

植物の効果を最大限感じられるよう、普段から刺激の少ない食事を取り、身体をニュートラルな状態にしているそうだ。

さらにはちぎって食べたり煮出して飲んだり、あらゆる摂取方法を試すことで、次第に植物の効果や、最大限効果を発揮する摂取方法を知ることができるという。

それを人々に処方するのだからもはや「ドクター」でしかない。
たとえ南米のジャングルの中であろうと、医者になるには猛勉強が必要なようだ。

古くは集落の人間にのみ施されていたシャーマンの処方だが、近年は集落外の人間を受け入れるシャーマンも少なくない。

今回我々が訪れたのは、この地域で名の知れたシャーマンである「ロヘル」がジャングルを切り開き、一般客を受け入れるために作った施設だ。

ちなみにここ、電波も通じないし当然電気もない。

スマホが使えないので時間も分からないし、ジャングルの奥地なので他には何もない。
特にやることもないので時間が無限にある。

自分と、周囲の生き物や植物のみの世界だ。
そんな環境で1人1つの小屋を借りて、結局1ヶ月もこのジャングルで時間を過ごした。

ジャングルでの家

普段は他にもお客がいることが多いそうだけど、この時は新型コロナの流行が原因で、滞在していたのはずっと僕たち2人だけだった。

借りていた小屋はこんな感じ。

ガチでヤシの葉っぱで屋根が作られてる…
中にはベッドがあるだけ。

汲み上げた井戸水を利用したシャワーもあるけれど、当然お湯は出ないし、溜まってる水しか使えないから節水しなきゃいけない。

でもまぁ、それはしょうがない!ジャングルだもの!

ただロウソクの火に水がかからないようにするのはめちゃくちゃ気を遣う!!!

これないと何も見えん!!
ロウソクに気を遣うのがいやで、日に日にシャワーの時間が早くなっていく!

やることがなさ過ぎて日記を書いたりしていたけれども、ロウソクの火を頼りに紙に文字を書くのも初体験かもしれない…

ジャングルの朝

日が沈むと暗くなって何も見えないし危ないので、自然と日の入りと共に眠り、日の出と共に起きる生活習慣になっていた。

調べてみたところ我々がいた時期のペルーの日の入りは18時30分、日の出は6時なので、どうやら12時間近く眠る生活をしていたらしい!

めちゃくちゃ健康的!!
でも昼行性の動物って本来はこういうものなのかな?

ちなみに朝起きると、毎朝ベッドの周りに最低でも6匹はゴキブリが死んでいる。
蚊帳を巻き付けてるから身体には登ってないはず。そう信じたい。

起きて外に出ると、ロヘルの指示で管理人のミシェルが用意してくれた、謎の薬草の青汁みたいなものを浴びるのが日課である。

なにこれ…

たまに燻した煙を吸わされるなど、肌や呼吸から吸収するタイプの植物らしい。
たまに種類が変わったので、ロヘルが何か考えてくれていたのだろう。

どういう薬用効果なのかは分からなかったけれども、お肌がスベスベになる効果はあった!

あこちゃんが「こんな生活してるのにお肌の調子めちゃくちゃ良いんだよね…」と言い始めたことで発覚。
僕は二の腕周辺の肌が荒れやすいのだけど、それもすっかりなくなっていた!

ただ本当にこの青汁浴びの効果なのかは疑問である。

食事

1日の最大の楽しみが食事だ!
食事は大きくて立派な食事用の建物で食べる。

ジャングルは静かなので、食事を運んでくれるモトバイクが近づくと、エンジン音が遠くからでも聞こえてくるのだ!
聞こえると毎回ワクワクである。
食事を持ってきてくれるタイミングで、大体の時間も分かる。

ただ薬草の効果を高めるため内容はかなり質素なうえ、ロヘル一家のキッチン事情によってもかなり変化してしまう。
ぜひ紹介させて欲しい。

こちらは、かなりベーシックなレベルの食事。

味付けはない。
僕は焼いたバナナが好きなので、こういう日は割と楽しんで食べることができた。
あこちゃんは隣で死んだ魚のような目で味わっていた。

こちらはかなりのご馳走レベル!!

何より愛情と手間ひまを感じる!!
こういった料理をたまに作ってくれるのは、ロヘル一家のお手伝いさんであるオネエのホセだ。

彼女は彼氏と一緒に来る日以外はちゃんとした料理を用意してくれる。
我々はホセが作ってくれたご飯を「ホセ飯」と呼び喜んだ。

しかし良いことばかりではない。
こちらの料理はブチ切れレベル。

これが彼氏と一緒の時の「ホセ飯」である。
こういう料理というわけでもなく、思いっきり残飯なのだ。

こんな日は置くだけ置いてそそくさと帰るので、後ろめたい気持ちはあるらしい。
翌日ホセに会った際にはブチ切れた。

ホセのことは好きだが、唯一の楽しみが食事なうえ常にお腹が減っているので、恨みがめちゃくちゃ強い。
お金は渡してるのだから、せめてベーシックなやつを用意して欲しい…

ブチ切れたあとは「彼氏ホセ飯」の日も

ヌードルを入れて誤魔化すくらいのことはしてくれるようになった。
ちょっとは我々の想いが伝わっているらしい。

たーまん「ホセは男でダメになるタイプやわ…」

いつしか「彼氏ホセ飯」の日はあこちゃんが米を勝手に使い、とてつもなく美味い炊き込みご飯へと生まれ変わらせてくれるようになった。

炊飯器もなければ火をつけるのも一苦労なこのキッチンで、まさか炊き込みご飯が食べられるなんて!
その後、キレるあこちゃんを横目に僕はこっそり「彼氏ホセ飯」の日を楽しみにするようになった。

ロヘルが作る薬草

毎朝の薬草浴びの他に、ロヘルが作ってくれる薬草を毎日飲んでいた。

僕は持病についてロヘルに相談していたこともあり、レアな「プランタ デ ラ ヴィーダ」という薬草を飲ませてもらうことに。
「planta de la vida」は直訳すると「生命の植物」という意味だ。

先進国の研究者が何度もこの植物を研究しに来るけれど、栽培や薬用効果のある実の収穫が難しく、なかなか成果を上げられないらしい。

ロヘルも前回「ヴィーダ」を使ったのは3年以上前だそうで、その時はガン患者に毎日与え、元気になって帰ったそうだ。
不思議とそんな時には、普段とれない「ヴィーダ」の実がよく収穫できるという。

今回も、たまたま我々が来た時に実が落ちていたそうで、使わせてもらえることになった。

左の青汁っぽいのがあこちゃんが1日2回飲む「マルサ」
右のアクエリアスみたいなのが僕が1日3回飲む「プランタ デ ラ ヴィーダ」だ。

マルサに比べて飲みやすそうな見た目とは真逆で、飲むと喉が焼けるように痛い!
特に慣れない最初のうちは胃まで熱く焼けるような感覚になり、1日中胃が張って苦しい。

たーまん「これはキツい…」
あこちゃん「良薬口に苦し、だよ」

薬草は1ヶ月の間で少しずつマイナーチェンジを繰り返しながら毎日続いたが、途中で出てきた「オヘイ」という薬草は凄かった!!

いよいよ身体をデトックスさせよう、ということで登場した「オヘイ」はいわゆる下剤の効果を持っている薬草だ。

たいして何も食べていないのに、飲んだ直後からトイレを離れられない!
もうずっと出てる!!怖い!!!

途中からはあまりに出続けるので
「俺ってもしかして、うんこを排出する為のただの筒なんじゃないか…?」
とまで考え始めてしまう。

「オヘイ」を飲んだ日はお互い自分の小屋のトイレに篭りっぱなしで、珍しく全然話さない日になった。

夢を見せる薬草「マナチヤリ」

朝の青汁を作ってくれるミシェルが、数日に一度運んできてくれるのが「マナチヤリ」という薬草だ。
なんとこの薬草は、こめかみに押し当てて使う。

何かしら説明してくれてるのだろうけど、スペイン語で全く分からないから怖い!
そして両方のこめかみに押し当てた「マナチヤリ」を…最終的に包帯で巻く!

え、今何されてんの!?

ミシェルが何かしらの説明をしてくれつつ、あこちゃんも包帯を巻かれていく。
しばらくしたら…

いや二人で大怪我してる!!
完全に見た目は交通事故にあった人たち!!

しかもなんと夜にシャワーを浴びるまで、ずっとつけておかなければならないらしい!
最初はこの見た目に笑っていたのだけど…次第に「マナチヤリ」の効果に気づき始めていく。

「マナチヤリ」を飲んだ日の夜には、やけに生々しくリアルな夢を見るのだ。

凶暴な夢なことも多い。
喧嘩をしてめちゃくちゃ怒る夢だったり、気持ち悪い夢だったり…
内容をちゃんと覚えていなくても起きた後に感情が残っているほど、とてつもなくリアルで生々しいのである。

僕が見た最も印象的な夢を1つ紹介したい。
僕は夢の中で、あこちゃんと2人、腰まで水に浸かる真っ暗な空間にいた。
目の前には、頭に七色のトサカが三つもある大きなサギが水面に立っている。

「大きいねぇ」「立派なサギだねぇ」とあこちゃんが言っている。
すると水中からか、上空からか、更に大きなフラミンゴが飛んで来て、水飛沫をあげながらサギを捕まえて飛んでいく。
その様子がゆっくりとスローモーションで展開される。

「めちゃ綺麗!」「スローモーションや!すごい!」
と2人で言っていたけど、水飛沫が激しくて僕は怖くなる。
自分もフラミンゴに襲われるのが怖くて水中で暴れていると、うねる大きな水の塊が(水中にいた蛇だったのかな?)僕に襲いかかってきた!

そこで映画のように「はぁっ!!」と叫んで起き上がったのだった。

心臓はバクバクしていて身体はフラフラ。
夢での出来事とは思えないほど鮮明で、夢を見すぎて疲れることも多かった。

突然だけど、ロヘルには日本人の弟子がいる。
詳しくは後述するが、既に15年以上シャーマンの修行を行っているミツさんという男性だ。

ミツさん曰く

ミツさん「マナチヤリは、日本でいうチョウセンアサガオだね。
夢に作用するから、家の庭に群生したりすると変な夢を見るといわれてる」

ミツさん「昔から麻酔とか鎮痛の薬効で知られてて、世界初の全身麻酔手術もチョウセンアサガオで行われてるし、宗教画とかにも登場してる。
ただ、根っこはめちゃくちゃ強力だから、飲んだら最悪死ぬんだよ」

たーまん「それはやばいですね」
ミツさん「俺もロヘルに言われて飲んだんだけどさ、5秒で発狂して倒れちゃったよ」

たーまん「いやそれ飲んじゃダメでしょ!」
ミツさん「修行の一環でさ。その時点でも修行して長かったから、案外受け入れられるかと思ったんだけどね。ぜんぜんダメだったね。」

まさか日本にも普通に生えている植物が、そんな強力な作用を持っているなんて思いもしなかった…
でもよく考えたら「栄養価の高い野菜」とか「スーパーフード」とかも、言ってしまえば身体に効果的な植物だし、漢方だってそうだ。

案外身の回りに薬草ってのはあるのかもしれない。

現代のシャーマン ロヘルとミツさん

この地域でかなり有名で、我々が今過ごしているこの施設を作ったことでなかなか儲かっているロヘルについて紹介させて欲しい。

元々、ロヘルのお祖父さんは人から恐れられるほど強力な力をもった、シピボ族を代表するシャーマンだったそうだ。

お祖父さんは普段、部族の人たちも滅多に立ち入らないジャングルの奥地に住んでいたのだけれど、家族が集まったある日。
11人いる兄弟の中からロヘルだけが

「お前は才能がある」

とお祖父さんに見出され、その日からお祖父さんと奥地に住むことになったそうだ。
ロヘル8歳の頃の出来事で、お祖父さんとの自給自足の修行生活は18歳になるまで10年間続いたとのこと。

ジャングルでの生活もおもしろいエピソードが沢山ある。
湖の向こうに、狩ったシカを木の上に隠すジャガーを発見したロヘルは、ジャガーが離れるのを確認してから船で接近!

急いでシカをなんとか引きずり下ろして船に乗せ、湖に再出発!
ジャガーから獲物を盗んだのだ!!

帰ってきたジャガーは地面に前足を叩きつけて悔しがっていたらしい。
滅多に褒めてくれないお祖父さんも、シカを丸々一匹引きずって帰ってきたこの日は絶賛してくれたとのこと。

そんなお祖父さんは死に際、ロヘルに「お前は…めっちゃ金を稼ぐぞ。」という予言を残して亡くなったそうだ。

その後誰も自分のことを知らない土地で先生を目指すものの、地域のシャーマンに

「お前!そんな力を持ってここで何やってるんだ!?」
と突然声をかけられたり、地域の外から来る客に処方を行う施設を作る、という夢を毎日のように見たり…

と、先生をやって暮らすことができず、仕方なく「人生の学校」という建前でこの施設を作ったらしい。
結果、観光客が集まってくるのだからお祖父さんの予言は当たっていたようだ。

今も彼の元にはあらゆる地域のシャーマンが勉強のために訪れている。

 ▲こちらはロヘルがいつも使っている作業台

続いて紹介するのはロヘルの弟子である「ミツさん」

彼は元々建設系の棟梁をしていたのだけど、9.11を機に我々のように世界を旅することを決意。
まだ今ほど開拓されていないこの施設に辿り着き、ロヘルに弟子入りを頼み込んだらしい。

弟子になってからは托鉢僧のように、食べ物を地域の人にもらいながら生活していた。
住んでいた家は夕方になると、中にまでコウモリの大群が蚊を食べに押し寄せたそうで、外から家の様子を見た地域の人には

「あの日本人、黒魔術の修行をしているぞ…」

と恐れられたこともあったそうだ。

ちなみに彼は、なんとこの地で日本人の奥さんと子供と一緒に生活している!
奥さんとは普通に日本で出会ったらしい。

いやジャングル来ちゃう奥さんヤバすぎる。
しかも妊娠してる状態で素手で一緒に家作ってたらしい。強すぎる。

ミツさんは近代的なコミュニケーションが取れる上にシャーマンとしての実力もあるので、ミツさん指名でお客さんが来たり、呼ばれてアメリカやヨーロッパに行くこともあるそうだ。

ニューヨークでは目の前にハチドリが飛んで来てホバリングしたまま動かなかったり、インドで座ってると数十頭の牛に周囲を取り囲まれたり、鳥が指に止まってきて口に入れても飛び立たなかったり…

と、彼には動物が寄ってくるエピソードが沢山ある。

ミツさん「肉とか全然食べないからさ、匂いで“こいつは危害加えない”ってバレてるのかもしれないよね」

ミツさん「牛もさ、最初リーダーみたいな奴が目の前まで顔を寄せてきて、観察されてる感じだったんだよな。“お前なんか変だな”みたいな。」

ミツさん「“ただ生きてるだけだよ。”って思ってたらその場で寝転び始めて、他の牛たちも取り囲んで寝転び初めてさ。
なにこれって焦ってたらインドの人たちにもめちゃくちゃ写真撮られてさ。どっかネットに上がってるんだよきっと。」

いやエピソードヤバすぎでしょ。
鳥を口に入れてるシーンは慌てて撮ったという動画まで見せてもらった。
「舐めてると食べるぞ!」と思いながらそんな奇行に及んだらしい。

実際シャーマンには、さまざまな動物が寄ってくることが多いそうだ。

さらに彼らは、薬草を練り込んだ特殊な「シャーマンたばこ」を常に吸っている。
試しに僕も吸ってみたけれど、あまりにキツくて吸っていられなかった。

アヤワスカ

アヤワスカのことを書くべきかどうかは、非常に悩んだ。

シャーマンが駆使する薬草の内の1つであるアヤワスカは、ペルーの国家文化遺産に認定されている。
しかし植物に含まれる成分に幻覚作用があるため、日本国内での使用が禁止されているからだ。

アヤワスカの使用を推奨するつもりは全くないのだけど、それでも書こうと思ったのは、書くことなしに僕がジャングルで体験したことの全ては伝えられないと考えたからだ。
さらにアヤワスカについて誤った認識が広まっている現状に対し、ある程度冷静な見解を伝えられたらと思う。

 ▲ペットボトルに入ったアヤワスカ

これまで紹介したような、僕がシャーマンに処方してもらった薬草の多くはデトックス効果を持つものだ。
身体に溜まった悪いものを全部出して、リセットしてから良いものを取り入れようということだろう。

アヤワスカもそんなデトックス効果を持つ薬草の一つで、身体というよりは心のデトックスが目的の1つとされている。

真に効果的な状態でアヤワスカを飲むと(僕はあまり見なかったけれど)「ビジョン」と呼ばれる幻覚を見ることや、自分の人生のあらゆる時点について振り返ることになる。

忘れてしまった過去のトラウマや隠れた問題について不意に思い出したり、自分でも知らなかった自分の性格に気付いたりするのだ。

 ▲アヤワスカの儀式を行う会場

以前アヤワスカについての研究が書かれた論文を読んだ時におもしろい記述を見つけた。
溺れて酸素が急激に減るなど死の危機に瀕した際に、身体は脳を保護する成分を出すそうだ。
それと同じ成分が、アヤワスカを飲んだ際にも脳に分泌されるらしい。

つまり仮死状態に陥り、脳が守られている状態なのである。
これは僕の考えだけど、アヤワスカを飲んだ後というのは人生最後の走馬灯をゆっくり見ているような状態なのかもしれない。

とはいえ食事制限などをしっかりしていないと、アヤワスカの効果は身体にのみ効いて、心にはさほど作用しない。
ひたすら嘔吐と下痢を繰り返すことになる。

食事制限をしていても、少なくとも近いうちに3回は飲まないと、本来のアヤワスカを感じるのは難しい。

さらにアヤワスカの効果は、ロヘルやミツさんのような修行を積んだシャーマンが行う儀式によるガイドがあって初めて成立する。

 ▲ロヘルの作業台をいじるあこちゃん

夜に行われる儀式ではシャーマンも一緒にアヤワスカを飲み、古いシピボ族の言葉で一晩中歌を歌ってくれるのだけど、この歌やシャーマンの動作で我々はアヤワスカの世界をガイドされる。

ミツさんによると歌は「今あなたの中を見ています」とか説明をするような歌詞が多く、その人の頭上にあるモヤモヤしたのを整えたり、広げてみたりするらしい。

なにそれ意味わからん!

僕はこのアヤワスカの儀式を、1ヶ月の滞在期間で6回体験した。

どの体験も書き始めるとキリがないのだけれど…
とある回のアヤワスカの体験談と学びを、書いていた日記の文章を引っ張り出しつつ紹介したい。
抽象的な上に長くなるので、読み飛ばす人は読み飛ばして頂いて構わない。

▼アヤワスカ体験記①▼
それまで、ガツガツ貪欲にアヤワスカの世界に入ろうとしていた僕は、今回は完全にリラックスして、全てをシャーマンに委ねよう。
という気持ちで儀式に挑むことにした。

飲んでからしばらくした頃。暗闇の中でシャーマンが歌い始める。
心地良く聞いていると、ふと気づけば僕は宇宙空間にいた。

宇宙に浮かんでいると同時に、宇宙の歴史を一気に見ているように感じる。
そしてふと
「これは宇宙っぽい何かが見えているのを、俺が宇宙と認識してるだけなんや」
と思い始めた。

絵に描かれた色彩を風景や人物と理解するように、宇宙のような景色を見て、自分の知識に当てはめて宇宙と認識しているだけということ。

そして
「でもそれで良いし、何もかも自分の好きなように捉えれば良い。」
ということに気付く。

音も光も存在も、この世にある全てのものは、ただそこに存在している。

人はそれを感じとり、自分の中で噛み砕くことで何かを理解する。
噛み砕く最中に何かに気付き、何かを学ぶ。

噛み砕く中で自分に蓄えられた知識が多いほど、何かに気付く引っ掛かりが多くなるから、知識を増やすことはとても大切なこと。

そこから何を学ぶか、どう理解するかは自由で何の縛りもない。
言葉にしてしまうのも狭すぎるし、自然というのは言葉で到底理解できるものではない。
学ぶことで、人それぞれが持っている「自分の真理」に少しずつ近付いていく。

そうであれば自分を取り巻く全ては自分にとって良いもので、何もかもが自分に何かを教えてくれる存在になり得る。

「自分の真理」さえちゃんと分かって、自分の幸福を感じていれば、あとはただ伸び伸びと自由に、世界を楽しく明るい方へ捉え、進み、生きれば良い。

そうすれば、自分が感じるのはただひたすら愛でしかない。

アヤワスカの世界から醒めると、宇宙から帰ってきて一息つきたくなった。
トイレに行くため外に出ると、地球の自転を感じてゆっくり倒れてしまう。

たーまん「そうか、お前も回ってるもんな」

頑張ってるなぁ。いつもありがとう。
倒れたままでも、風や聞こえる虫の声が気持ち良い。

この世に存在するものを感じ取る身体をくれた両親に感謝。
さらにこの身体は沢山の人の優しさ、心配、手助け、その他もろもろの愛情のおかげでここまで大きくなって、思考できる今をくれている。

全ては愛情をくれた全ての人たちのおかげ。とてもありがたいこと。
自分は愛してくれた人たちに、しっかり愛を行動で返していける人間になろう。
愛している人に愛を伝え、自然から多くを学びたい。
そしてもっと成長したい。
▲アヤワスカ体験記①▲

その他にも
 雨も虫も風も、全てが愛おしい自分の子どものように思える瞬間があったり、
 ミツさんに白い木のビジョンが見えたり、
 操られてる気がして儀式の会場中を転げ回ったり、
 何にも負けない自信がついた日があったり、
 そんな時は握ってた拳が燃え上がったようなビジョンが見えたり、
 過去の偉人と話をしたような感覚になったり、
 幽体離脱して日本に帰った気がしたり、
 シャーマンの役割を直感的に理解できるようになったり、
 自分の知らなかった自分の性格を知ったり、
 認めたくなかったことを認めたり、
 後悔していたことを懺悔したり、
 子どもみたいに泣いたり、
 お金なんていらんかも、と大人になってから初めて思ったり、
 あこちゃんと、これはもう一生一緒にいるなと感じたり、

沢山のことをアヤワスカの儀式中に感じた。

しかしその中でもやはりロヘルは凄まじく、
「今日はアヤワスカ、そんなに効いてないかも?」という日があった。

思ったと同時くらいにロヘルが立ち上がり、僕の前に座った。
煙を吹きかけられたり、かざされた腕を回されたり。
そんなロヘルの動きに僕は完全に操られて一緒に動いていた。

指一本も触れられてないのに寝かされ、ロヘルが歌い始めると、
グワッ!
とジェットコースターに乗ったような感覚があり、グランドキャニオンのような、太陽が煌々と輝くだだっ広い大地に連れて行かれた。

ミツさんも凄いのだろうけど、やっぱりレベルが違う。
ロヘルは本物。これが本物のシャーマンなんだろうと知る日になった。

近年は欧米を中心にアヤワスカの存在がある程度有名になってしまい、幻覚作用を求める観光客の需要がものすごい。

アヤワスカの製造方法もシャーマンによって少しずつ違うため、街中にはたいして経験を積んでいないシャーマンの不完全なアヤワスカによる未熟な施術が横行している!
劇薬を身体に入れるようなものなので、これは大変に危険。

逆に街に出たがらない本物のシャーマンの方が、森林伐採によって住む場所を追われ、肉体労働者として生きている実態もある。

日本人の中にもアヤワスカのことを知り「試しに1回飲んでみよう」というような人がいるようだけれど、アヤワスカのみを飲むものでもないし、1度飲むだけでは真の価値は何も分からないはずだ。

ジャングルと、ジャングルが培ってきた文化は底がしれない。
敬意を持って接しよう。

南米ジャングル、シャーマン編はこれにて終了。
1ヶ月の滞在とシャーマンによる処方によって、相談していた持病が治ったのかというとそんなわけではない。

しかしジャングルの奥深さを知り、人と比較したり羨む前に、ありのままの自分を肯定することができた。
視野が広がって、自信を持てたのかもしれない。

そしてそれを、あこちゃんと時間ごと共有できたこと。
毎日一緒に、お互いのありのままの話ができたこと。
僕にとっては、それが何よりの財産だと思う。

我々がこの施設を旅立ってしばらく。
元気だったロヘルは急激に弱っていき、ついには亡くなってしまった。
医者にも原因らしい原因は分からないという。

ロヘルに人生を救われた世界中の人が、ジャングルの集落に押し寄せたそうだ。

ミツさん曰く

ミツさん「儀式をすることでシャーマンもアヤワスカを飲む。
アヤワスカの力を借りて施術して、自分たちの心もデトックスされてんだよな。」

ミツさん「コロナ禍で人が来なくなって、儀式する機会もなくなったからさ。
心のいろんなもんが溜まっちゃったんじゃないかと思うんだよね。
俺も同じような状態になってたからそんな気がするんだよ。」

ミツさん「特にジャングルの人たちはウイルスみたいな分からないもの、怖いしね。
元々は何も持ってなかったのに、お金を失う恐怖もかなりひどく感じてた。
ロヘルはこれまでの人生でそんな心の状態を経験したことなかったと思うよ。」

ミツさん「とにかく、2人がロヘルの最後の客だよ。」

世界の流れの中で、また1人本物のシャーマンがいなくなってしまった。
我々は彼が作った「人生の学校」の最後の生徒として、自分に恥じない生き方をしたい。

つづく