徐々に見慣れて来ると、ドギマギする代わりにじっくり観察してしまうようになった。
「ああ、これは彼氏の方がお熱だな!」、「この彼女はちょっと今気落ちして、彼氏が慰めているな」などと勝手にストーリーを考える余裕まで出て来た。
実際、ESIBIZIONISTI(エシビツィオニスティ)と呼ばれる見せたがり屋も存在していて、わざわざ人に見られる場所でイチャイチャするのが好きな人達がいるのも確かだが、とにかく自分たちに酔いしれて思わずやってしまう!というのが過半数だろう。
そして一見軽く見えがちな彼らのキスは、私たちにとっての判子捺印のような固い決心の表れなのではないかと思うようになって来た。
人目もはばからす出来ると言う事は「私はこの人を愛しているのです」と いう気持ちが止められなくて、それを表明したいがために、どこででもやってしまうのではないか。
試しに女性バリスタでバール勤務のSさん(41)に聞いてみると、「とにかく、顔を見てたらしたくなるのよ。
もう癖ね。
でも、わざわざキスしに出かける事もあるわ。
ロマンチックな場所ならもっと気分が盛り上がるからね!」という答えが返って来た。
なるほど、言われてみて初めて気づいたが、フィレンツェの高台にある素晴らしいパノラマで有名なミケランジェロ広場に行けば、映画顔負けのキスシーンがあちらこちらで展開されている。
観察していると、「ここに来たからにはロマンチックにキスしなきゃ!ね?アモーレ!」と各々が頑なに決心しているのが一目で解る。
|